西端真矢

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過ぎゆく夏を惜しんで、夏の妄想きものコーディネイト 2020/08/30



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厳しい残暑の日が続きますが、それでも、武蔵野の我が家の庭からは虫の声が聞こえ、秋が近づいていることを感じます。
今年の夏は、私は、私的な外出は一切なく、きものを着たのは東博「きもの展」の内覧会の一回だけ。夏のきもの類は一度でも着たら悉皆に出すので、毎年かなりの出費になり、それがないのは助かりますが、しかし何とも寂しい前代未聞の夏になってしまいました。

そんな中、大学教授だった父の教え子の方――と言ってもその方もある大学の教授でいらっしゃるのですが――から、この夏、お茶道具ときものをまとまって譲って頂き、地味な日々の中の華やかな出来事となりました。
中でも私の好みのど真ん中に刺さる素敵な紗の小紋があり、こんな帯合わせはどうだろ、と、きもの消化不良の夏を惜しんで“妄想コーディネイト”で遊んでみたのが上の四枚です。

きものは、光の加減によって、濃紺にも、やや青みがかっても見える紺色の地に、愛らしいかすみが散る模様。もう、たとうを開いた瞬間にキャー!と声を上げてしまったおしゃれな子です。平凡ではない、でも、奇をてらってもいない。こういうきものに最も心をつかまれます。

そんなこの子のために手持ちの帯で組んでみた四つのコーデネイト。

<上段右>
夏の始まり、六月頃から盛夏までなら、まず、白の絽綴れ地に絽刺しで片輪車模様をあらわした帯で王道にまとめてみたい。片輪車模様は牛車の車輪を川で洗っている様子を表す夏のアイコン。祖母から伝わった帯の中でも、とても大切にしている一本です。お食事会に歌舞伎観劇、目上の方と会う日などにも良さそうな組み合わせになりました。

<上段左>
七月から盛夏までの季節に、もう一本、水色地に鷺草模様の染め名古屋帯はどうでしょうか。こちらもあらゆるシチュエーションに対応出来そう。夏ならではの冷水点てのお茶のお稽古に締めても、涼しげで良さそうです。

<下段右>
盛夏の華々しいパーティー、或いは歌舞伎座の初日などには、こんな派手派手しい帯も良いかと。こちらも祖母から伝わったもので、満州事変前後、昭和元禄期のいけいけな空気が横溢しています。いわゆるアンティークに属する帯ですが、あまり締めなかったようで、とてもきれいな状態で残っています。強烈なオレンジ色の絽地に、にぎにぎしい帆船模様。真夏の日差しにも負けない一本です。

<下段左>
きものの世界では立秋を過ぎたら秋の模様のきものを着る、とされていますが、体感としては夏真っ盛り。私は、日本人にとって大きな節目の日である八月十五日の終戦記念日、それはお盆の日でもありますから、この日を過ぎたら、秋の雰囲気のきものを着るようにしています。
と言ってもそんなに沢山は持っていないのですが、こちらはその中の一本。藤色の紗地にひっそりと桔梗を織り出したものです。道明先生に頂いたシャーベットグリーン色の高麗組の帯締め(もちろん道明製)を合わせて。
ああ、本当なら今頃は、こんな取り合わせで街を歩いていたはずなのに‥

それでも、こうしてコーディネイトを考えるだけでも少し気分が慰められます。皆様のお好みはどの組み合わせでしょうか?
来年の夏は、そして出来るならこれから始まる秋や冬の季節にも、きもので出かけられる日が戻って来ますように。