西端真矢

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『平清盛』は何故つまらないか? 一視聴者の意見 2012/03/30



今年の大河ドラマ『平清盛』が大不評で、いよいよ視聴率が10パーセントを切るのでは?と噂されている。
私は歴女なので、大河ドラマは基本的に大好きだ。去年の『江』はあまりにも脚本がひどくて途中で放棄してしまったけれど、その分、今年の『清盛』には期待していた。でも、確かに出来は良くないと思うし、視聴率が上がらないのも納得出来る。その理由を私なりに書いてみようと思う。

そもそも『清盛』が始まった当初、兵庫県知事が「画面があまりにも汚過ぎる」と文句をつける事件があった。現在の視聴率低迷も、この汚い画面作りが大きな原因ではないか?そんな意見も根強い。
でも、これは当時のリアリティを追究した結果であり、十二単や蹴鞠に代表される雅の世界を楽しんでいたのは特権階級の貴族だけ!庶民はぼろを着て京都の町も貴族の邸以外はおんぼろの小屋ばかり!そんな超絶格差社会への不満が武士の台頭=つまり清盛の成功につながって行くのだから、ドラマの伏線作りとしてはとても正しいと思う。
それに、汚い画面は決して低視聴率の真の原因ではないのではないか。だって、思い出してもみてほしい。高視聴率だった一昨年の『龍馬伝』だって、しょっちゅう汚らしい男たちがボロを着て走り回っていたではないか。香川照之などそのあまりの汚らしさでかえって人気が出ことを、2年経って皆忘れてしまったのだろうか?

私は、このドラマの最大の敗因は、脚本だと思う。
脚本のどこがダメかと言うと、清盛が“天然ボケのいい人”にしか描かれていないところが壊滅的にダメだと思うのだ。
そもそもこの時代と言うのは、信長や秀吉という、ゲームや漫画でもおなじみのあのキャラクターたちが登場する戦国時代よりは、マイナーな時代ではある。だから人物に感情移入がしにくいことは事実だ。
でも、日本人なら皆中学の国語の時間に、『平家物語』の冒頭の一節を朗読させられたはずだ。そう、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…(中略)奢れるものも久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」というあれである。
正確な意味は分からなくても、一度は「頂点を極めたゼ!」と奢りたかぶった者が、例えばバブル紳士のように、例えばホリエモンのように、いつしか歯車が狂って没落してしまうこともある。それが人の運命のはかなさだよね…このニュアンスは日本人なら誰でも、『平家物語』の一節からぼんやり感得しているはずだ。

つまり、特に歴史好きではなくても、日本人一般の心の中で平家というのは“一回は大成功した人”という共通イメージでとらえられているということだ。もちろん歴史愛好家にとっては、数百年間続いて来た貴族支配を打ち破り、初めて武家政権を作ったすごいヤツ、という認識でとらえられている。
そういう、“頂点を極めた人物”という共通イメージを、我々は無意識に現代の自分たちの生活に当てはめながらドラマを見ているはずで、それをNHKが全く忘れてしまっているように思えるところに、今回の敗因があるのではないだろうか?
どういうことかと言うと、ごく当たり前のことだが、政治経済で頂点を極める人間が“天然ボケのバカ”であることは有り得ない、ということだ。そのような人物はやはり人の心を読むことにたけ、権力の有り所に敏感で、どうやったらその権力を自分の元へ引き寄せられるのか、深く分析出来る知力を持っている。私たちは誰でもそのことを経験で知っているし、その経験を元にドラマを見ているということだ。
だから、たとえ子ども時代であっても、青春時代であっても、後に大きな大きな政治的栄光を手にする人物が、ただただ素朴でドジばかり、だけど憎めないいいヤツであったわけがな・い・よ・ね!と突っ込みを入れたくなってしまうのだ。もっと若い頃から目から鼻に抜けるような権謀術数の片鱗が見え隠れしていたは・ず・だ・よ・ね!と。その突っ込みがつまり、継続視聴の放棄=視聴率の低下につながっているのではないだろうか。

でも、ここまで書いていてはたと気づいた。日本の憲政史上、最も愚鈍な人物が総理大臣の座についた一時期があったことを。そう、“鮫の脳”と言われたあの人、日本人の忘れたい過去、森喜朗首相である。
まあ、あの方は各派色々な政治バランスの上で首相にまつり上げられたのだろうが、今の清盛の描かれ方だと、大人になるとあんなかんじ、森首相になってしまいそうなかんじなのである。一体誰が、森首相のおバカな青春時代を毎週毎週テレビの前に律儀に座って見たいと思うだろうか?NHKと脚本家は、この事実をよくよく考えた方がいいのではないかと思う。

           *

もちろん、NHKだって脚本家だってずぶの素人ではないのだから、今までの回は汚い絵作りと同じく、ドラマに周到に張った伏線のつもりだったのだろう。清盛が少しずつ少しずつ成長して行き、貴族の世から武士の世へと政治体制が変わる大転換のあの時代、昨日の敵と今日は手を組むようなあの複雑な時代をしたたかに生きる男に成長する…1年間かけてそのドラマを見せるつもりだったのだろう。
しかしあまりにもテンポが遅過ぎる!見ている側の視聴者たちはスマートフォンのゲームで遊ぶ時代。原発がメルトダウンしてアフガニスタンやイラン情勢は一触即発、中国やらインドやらに追い上げられているこのめまぐるしい変化の時代に打ち出すエンターテイメントとして、あまりにもテンポが遅過ぎることを、よくよく恥じ入ってほしいと思うのだ。
もちろん、最初の1、2回くらいは、清盛が若気の至りで失敗ばかりしていてもいい。でも立派に一家を構えるようになった今も、毎回失敗しては→反省→でもまた失敗。こんな人、今の社会ならとっくにリストラされているだろう。
私たちはそんな話を見たいのではない。天然ボケの好人物のどたばた奮闘記なんて全く求められていない。求められているのは、複雑な時代を複雑な内面で生き抜いて行く、時に非情、時に悲哀をただよわせた、強く美しく知力に満ちた男の物語だ。それももちろんおとぎ話に過ぎないのかも知れないが、おとぎ話にも時代の要請というものがある。今の清盛の描かれ方は、時代のリアリティと全く呼応していない。NHKは画面作りのリアリティばかりに血道を上げるのではなく、肝心の主人公造形のリアリティにもっと心血を注がなければいけないと思うのだ。

         *

ここまでは脚本について書いたが、実はキャスティングにも問題はあったのではないかという気はしている。
清盛を演じているのは松山ケンイチだが、私のような歴史好きが平清盛と聞くと一般的にイメージするのは、この彫像ではないだろうか↓
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京都の六波羅蜜寺にある重文の彫像で、私も実物を見たことがあるが、痩せて神経質そう、且つ、底知れぬ恐ろしさを持つ雰囲気。全くマツケンの持つイメージ=「いい人そう」とは異なっている
そして、おそらく現実の清盛もこの彫像の方に近かったのだろうと想像してしまう。これも歴史好きなら誰もが知っている事実だが、清盛は決して一代でのし上がった人物ではない。彼の祖父と父が既に相当な財力と地位を築き、そのバックグラウンドの上に満を持して登場した三代目。そう、言ってみれば“新興財閥の御曹司”が清盛だ。小さい頃からそれなりに贅沢な調度に囲まれ、父たちは貴族社会に地位を築こうと画策していたのだから、和歌や有職故実をみっちり教え込んで、青年に達する頃には優雅な物腰が板についていたはずだ。
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↑上の写真は、清盛が厳島神社に奉納したお経、「平家納経」(のごくごく一部)。これも平家と聞いたときに歴史好きが真っ先に思い出すものの一つだ。この絢爛!この華麗!歴史愛好家にとっての平家のイメージは決定的にこれである。
つまり、このドラマは、人物の内面造形の面でもリアリティがない上に、外見イメージも大きく清盛を離れていることにひどくがっかりさせられてしまうのだ。現在、清盛のライバル源義朝を玉木宏が演じているが、彼の方が私の心の中に刻み込まれた清盛の外見イメージには近い。或いは、崇徳上皇を演じている井浦新、伊勢谷雄介なども良いのではないか…。
しかし、今さら配役は変えられないのだから仕方がない。役者には演技力という武器がある。清盛には瀬戸内海の海賊たちを束ねた強面の一面もあるのだから、マツケンには優雅と荒々しさを兼ね備えた、新たな清盛像を作り出してほしいと願うばかりだ。

しかし、それには何よりも脚本が変わることが必要だ。ここまで視聴率が落ちたのだから当初の計画はきっぱりと棄てて、清盛の成長を一気に早めるべきだと思う。周囲の知者たちに教わってやっと何かをなす清盛ではなく、自ら知謀をめぐらし、自らの手で時代を少しずつ動かして行く男。江もそうだったけれど、受動的な主人公ではなく、主体的な主人公を描いて見せなければ、現実に複雑な時代を生きている今の視聴者は全く魅力を感じない
今回の脚本は『江』とは違い、清盛以外の人物はよく描かれていると思う。曲者揃いの脇役たちの中で、更に抜きん出て深謀遠慮のある人物として、清盛を悪とすれすれのきわどい線上を意志を持って歩かせる。そして「時代を切り開くためにはこうするしかなかったのだ」と視聴者にため息をつかせつつ納得させる。そんな、限りなく悪に近い男の魅力と悲劇を描き出すドラマに、変貌して行ってほしいと思う。

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巣ごもり中 2012/03/21



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ここのところ、面白いけど難しい、難しいけど面白い、面白いけど難しい、難しいけど面白い…永遠ループな仕事にかかり切りになっていて、若干高倉健的に不器用な私は日記も更新出来ずにいます。
他のお仕事もほとんど断り、遊びの約束も、半年前から決まっていたお茶会を除き、全てキャンセル。かと言って、では一日中PCに向かって文字を打っているのかと言うとそうでもなく、何と言うか、演技をする人がその役になり切るためにそれっぽい衣装を着てみたりするのと同じように、目指す文体、目指す内容の気分に自分を持って行くことに、ものすごく時間がかかります。あちこちに出かけてしまうと、せっかく出来上がって来たその“気分”が壊れてしまうことが怖いのですよね。

そんな訳で、近所の吉祥寺まで食料品を買いに出かけたり、家の周りをちょっと散歩する以外、巣ごもりの日々。猫は私がずっと家にいるので嬉しそうですけれど!
昨日は少し遠くの公園まで足を延ばしてみたら、早咲きの桜が咲いていたので撮ってみました(上の画像です)。最近、写真を撮りたいという気持ちが湧いて来ないので、私の6台のカメラたちも埃をかぶり気味。メカニックのために良くないので、久々に一番の愛機Nikon FM3Aで撮ったものです。やっぱりフィルムはいいナー。これからは順繰りに愛機くんたちにフィルムを詰めて、少しずつ風景などを、無心に、撮って行こうと思います。
桜の花。早く春が来ますように、という願いを込めて。

そう、この仕事もあともう少しで完成出来るハズ。
かつて広告代理店に勤務していた7年間、誇張ではなく日々修羅場の連続だったので、仕事が大変なことはまったく苦ではありません。ただただ、私にこの仕事を出してくれている人たち――とても素敵な人たちなのです――その期待に応えられる自分であれますように、と、大きなプレッシャーを抱きしめながら言葉の世界に没入しています。
早く完成させて、美味しいお酒が飲みたい!

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スター 芸能界で生きるということ 2012/03/06



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最近芸能ニュースをにぎわせている或る女優さんと、7、8年前、まだ広告代理店に勤めていた頃にお仕事をしたことがある。この「にぎわせている」というのは思いやりある言い方で、実際には「今、悪い評判を取っている」と言うのが正しい女優さんだ。

私がお会いした当時の彼女はまだ芸能界に頭角を現し始めたばかりで、私が担当していた或る商品のCMに起用しようかという話が持ち上がっていた。かなり大型商品だったこともあって、衣装なども用意してオーディション形式でクライアントと会って頂くことになり、その準備の過程で彼女と何回かお会いすることになった。
結局そのCMでは、「まだどこか華がない」というぼんやりとした理由で別の新進女優を起用することになり、彼女が選ばれることはなかったのだけれど、まだ二十歳そこそこにも関わらず落ち着いて自分の意見を述べ、スタッフにも礼儀正しい、聡明な女の子という印象だった。
その彼女が今、多くの人々を失望させ、また困惑させている。その様子を見ていると、芸能界という世界の底知れぬ恐ろしさを感じずにはいられない。

芸能界では、「注目」という地域通貨と引き換えに、こちら側の世界で桁違いの金銭や優待手に入れることが出来る。二十歳そこそこの女の子がその力に幻惑され、落ち着きを失ってしまうのは当然だとも言えるだろう。
けれどその「注目」は、私が関わったオーディションで彼女が落とされてしまった時のように、ほんの少しの運命の匙加減で、やって来たりまた飛び去って行ったりする。代償に得るものの力が大きければ大きいほど、そのしびれるようなギャンブルの感覚は強まって行くのだろう。
そして、一旦「注目」が彼女のもとへやって来た後には、まるで影が本体を凌駕して行くように、「注目」の世界の中の彼女の像が圧倒的な命を持ち始める。影と体は決して一つになることは出来ない。光が強ければ強いほど、その乖離の感覚も強まるのだろうと想像出来る。それを持ちこたえるために、強い反対力が必要になることもあるのだろう。そして彼女は「壊れた」行動を取り始めることになる。
彼女はこれからどこへ向かって行くのだろう?
光の中で傷を負いながら、ぎこちなく歩く美しい横顔を限りない同情を持って見守っている。同情などという言葉を聞いたらもちろん彼女は、ふん、何言ってるのよと笑うのだろうけれど。

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