西端真矢

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着物を着ることはただの贅沢か?――お年寄りや障害を持つ方でも着られる着物をデザインする、淺倉早苗さんを取材しました 2019/01/28



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発売中の「クロワッサン」、今号では二つのページを担当しました。
二日に分け、順にご紹介しますが、まず今日は、連載の「着物の時間」から。
今号では、体の障害や高齢のため、また、何らかのご病気によって身体の変形や器具装着の必要性が生じたために着物をあきらめていた方でも着用出来る着物、「ユニバーサルデザイン着物」を生み出した、デザイナーの淺倉早苗さんを取材しました。
以下の文章は、私にとって、思うことを最も表現しやすい文体である「で・ある」体で綴ります。

          *

昨年秋の園遊会に、平昌パラリンピック金メダリストの村岡桃佳さんが車椅子に振袖姿で出席した姿をご記憶の方も多いかと思う。
この着物をデザインしたのが淺倉早苗さんで、車椅子の方でも何の違和感もなく着物を着ることが出来るのだった。

淺倉さんとは、私のブログを読んでくださっていたことから交流が生まれ、長年、クロワッサンの連載でご紹介をしたいと思っていた。
現代において、着物を着ることは、ちゃらちゃらとした贅沢の世界だと思われがちだ。もちろん、或る意味でその見方は正しく、”ちゃらちゃらした高揚感”は着物に限らず、あらゆるおしゃれがもたらす一つの精神上の効果であるのだと思う。

世の中には、そのようなちゃらちゃらをくだらぬことと軽蔑する人々もいる。実は、私の父方の家はそのような思想を持つ人々で、質素を旨とし、装いに過剰な意識を持つことを精神の堕落と断じていた。
そのような家で育ちながら、しかし、私の中にあるおしゃれへの欲求はごくごく幼い頃から断ちがたく、それは、母方の家の父方とは真反対の血、ちゃらちゃらど真ん中の着道楽の血が現れたものなのかも知れない。
しかし、歴史好きの私は、世界のどこの歴史博物館へ行っても石器時代、土器時代の人々が貝や木や石を磨き削ったアクセサリーを身につけ、或いは顔や手足に染料を塗って着飾って来たことに驚かされるのだ。
そしてほとんどが土に還ってしまったため遺物を見ることが出来ないが、おそらく衣服も相当に工夫を凝らしたものを着ていたはずだ、と思う。おしゃれはごくごく原始的な、本能に近い欲求なのではないだろうか。

もちろん、おしゃれよりはずっとずっと強く生命の維持に結びついた欲求である食にそれほど興味がない人がいるように、おしゃれに興味がない人もいる。私も化粧にはさほど熱意は持てない。
しかし、多くの人にとっておしゃれが根源的な欲求である以上、それを頭から押さえつけることは人間の本性に逆らっているし、逆に言えば、おしゃれへの欲求を素直に発現出来るなら、人の精神は深い満足を感じるものとも思うのだ。

だからこそ、淺倉さんの活動を紹介したいと考えていた。
老人ホームに入居されているお年寄りも、病気やけが、障害のために着用出来る衣服の形に制限がある方も、おしゃれへの欲求を胸の奥深くに沈殿させて暮らしているはずで、ましてや着物は、私たち日本人が二千年の間身につけて来た衣服。着たいと思うのは当然ではないか。
「ユニバーサル着物」がどのような仕組みで作られ、何故すべての人が着物を着ることが出来るのか、また、淺倉さんが何故この活動を始めたのかは、ぜひ誌面からご高覧頂きたい。
そして、日本のどこかで、着物をあきらめてしまっているどなたかのもとへ、一人でも多く、この記事が届くことを願っている。


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