西端真矢

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一周忌 2023/12/27



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少し前のことになるが、十月半ばに母の一周忌を迎えた。
その日は何も予定を入れず、近所に買い物にさえ出かけず、家で猫と静かに過ごした。毎年この時期は我が家の庭には咲いている花がなく、唯一、芙蓉の木が花をつけているのだけれど、今年も同じようにたくさんの花をつけていて、見ていると、亡くなった日のまだこれは夢なのではないかと信じたい気持ちと、もう本当に終わってしまったのだとあきらめ認めている気持ちと、そのどちらもがない交ぜになった、混乱したあの日の自分が再び帰って来たようだった。

一年が過ぎて、悲しみが薄らいだかと言えばそのようなことはなく、何かスープなどを煮詰めていくとおりがたまる、そのおりの中に閉じ込められて毎日を生きているように感じる。
私の場合は特に母が認知症になってしまったことが何よりもつらかったから、その苦しさがいつも悲しみの中枢にある。
どうしてなんだろう?どうしてママが認知症にならなきゃいけなかったのだろう?――もちろんそんなことを考えてもどうしようもないことは理解しているのだけれど、それでもまた同じことを考え思考が堂々めぐりする。生きるということは、きれいに割り切れることだけで成り立っている訳ではなく、割り切れないことを割り切れるとこじつける偽善が私は何より嫌いだから、ただ、その悲しみをじっと感じて立っている。そんな一年だった。

芙蓉を見上げていたら、足もとにいつの間にか小さな黄色い蝶が飛んで来ていて、もしかしたら母が来てくれたのだろうか、などと思ったりもする。
久し振りに写真を撮りたくなって、もちろんそんな時はスマートフォンでもなくデジタルカメラでもなくフィルムで撮りたいのだから、ジェラルミンケースから古いニコンFM3Aを引っ張り出してみたりもした。以前は特に好きでも嫌いでもなかった芙蓉の花が、いつの間にか好きな花になっていた。
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