西端真矢

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ようやくきもので電車外出~~アトリエ花傳 展示会へ 2025/06/07



木曜日は〝きもので電車に乗り、2時間ほどレセプションに参加して帰宅する〟という、まだ手術の後遺症から回復途上の私にとっては一大事業を成し遂げた。

出かけたのは、観世あすかさんが手がけるバッグブランド『アトリエ花傳』展示会レセプション。
古美術商でもあるあすかさんが手掛けるすべて一点物のバッグは、龍村平蔵の錦織、浦野理一の端切れ(パッチワーク使い)、道明による正倉院御物復原の組紐裂、フランス・リヨンのグログラン生地、能装束の古裂、当代随一の手芸作家・下田直子さんのビーズ作品‥‥などなど、美しいということのみならず、強い個性を備えた布を用い、それらをあすかさんが卓越した美意識によってバッグという形式にまとめあげている。
https://www.fujingaho.jp/uts-kimono/shop/g35549313/atelier-kaden-bags-210223/
私は数年前に↑上記URLの『美しいキモノ』の記事で取材させて頂いて以来、心奪われ、後日、自分でも、下の写真の下田直子さんのビーズレースを主役に据えたバッグをお迎えした。
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ビーズレースの美しさ、藤色×焦げ茶色の配色。心をつかまれる要素ばかりで、こうして私のギャラはすべてきもの周りに吸い取られていく‥‥そのバッグを、母の介護、そして闘病が続き引きこもって暮らしていたために使う機会も得られずにいたのだけれど、今回、初めて手にして外出することが出来た。
会場で、あすかさん、そして道明三保子先生と↓
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何しろバッグが主役の日なのだから、今回は最愛のこのバッグを引き立たせるコーディネイトを心がけた。玉子色の蛍ぼかしの堅絽小紋に、河合康幸さんの紗の網代格子袋帯。
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蛍ぼかしは染めで表すことが多いけれど、こちらは手絞りで表現したもの。玉子色が好きで、訪問着、真綿紬、単衣大島と持っているのに、また気づくと買っている。
そして格子模様も大好きで、この袋帯もごく最近、一目惚れで買ってしまった初下ろし。色彩の絶妙な配色と、金糸ではなく銀糸を使っているところもとても好みで。
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帯揚げは紗。一部に入った紫色を、全体のわずかな差し色に、と択んだ。
帯締めは、道明の笹浪組。以前、道明先生に頂いたもので、かすかな金糸で控えめに礼装感が表現されていて、大好きな、そしてとても使い手のいい一本。
全体に、すべて控えめな存在感のものを組み合わせて、バッグが浮かび上がるようにとコーディネイトした。会場にいらした方に、
「遠くから見るとバッグが引き立っていて、意図が良く分かりました」
と言って頂けて、とても嬉しかった。
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そうそう、足もとも、まだ母の介護をしていた頃に誂えて、一度も履く機会のなかった夏用の絽の草履を、4年?あるいは5年?越しに、やっと下ろすことが出来た。
Sサイズの草履が年々買えなくなる小足受難時代の中、辻屋さんで特注で作ってもらったもので、ようやく日の目を見たのである!
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上の3枚の写真は、展示会に勢揃いした花傳のバッグの数々。重厚な伝統美のライン、華やかな大人かわいさを愛でるライン(私のバッグはココだろう)、紬や江戸小紋に合うきりりとしゃれたライン。あすかさんの美意識の幅広さにただただ驚嘆する。そして次はきりり系が‥‥などとまたまた胸が揺れ動いてしまうのだけれど~ラララ~♪

そして、開腹手術から、今月末でちょうど2年。
手術自体は成功に終わったものの、腹腔内での腸の位置が定まらないという、十人に一人ほど出る後遺症をまんまと発症し、腰紐や帯での締めつけが激しい不調を起こすため、きものをあきらめざるを得ない落胆の日々だった。
しかも、電車など乗り物の振動も腸の不調につながることが多く、つまりは、締め付け×振動。危険度が二乗に上がる〝電車での着物外出〟は私にとってとてつもなく高いハードルだった。
会の四日前、まだ自分の着付けだけでこの難関を超えることは難しいと判断して、着付け師の川口恵美子さんに来て頂くことにした。彼女の〝加減を知る〟素晴らしい着付け技術の力もあって、どうやら初めてこの難関を克服出来、今、達成感に包まれている。健康な人にはごく当たり前の〝電車できもの外出〟がこんなにも難しいものであることを、多くの方に知って頂けたらと思う。
もちろん、これからも、無理はせず、ゆっくりと。次は自分の着付けで電車に乗って、無事家に帰って来られるように(家に帰るまでが遠足!)。
それでも、再びきもので街を歩き、やっぱりきものって本当に楽しい、私は本当に本当にきものが好き、と、しみじみと思うのだった。

アトリエ花傳の展示会は9日まで代官山「ヒルサイドテラス」E棟ギャラリーにて。
アトリエ花傳 ホームページ:https://atelier-kaden.com/