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「むら田」に帯の誂えに 2023/06/16
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今週、再び渋谷へ。「むら田」さんに帯の誂えの相談に伺いました。
昨年秋から年末にかけて、「美しいキモノ」の連載のために取材に通った日々の中で、店主のあき子さんのおじいさまである板谷波山、また、お父様であるモザイク作家板谷梅樹の原画をもとに、帯の誂えが出来ることを知りました。私も一本作ってみたい‥と、憧れの想いがつのっていたのです。
この日は、大学時代の同級生も一緒に。
大手出版社文芸部の編集者、郡司珠子嬢は、多くの有名作家に愛され頼られている、たぶん文学界で知らない人のない切れ者編集者だと思うのですが、同級生の私にとっては、肩書のない「珠子」。そして大のきもの狂いという同好の士。
大学時代は机を並べてトマス・アクイナスの原文(ちなみにラテン語です)に頭を悩ませていた二人が、今は「浦野の染めってやっぱり力があるのよ!」「ちょっとこう、ぽつっとぽつっと模様が入った系の訪問着が必要かもしれない」「その帯ならあの市松の着物がピッタリでしょ!」などと、延々と話し続けている人生の愉快さよ!
*
‥‥と、そんな同級生二人でむら田さんのドアをくぐり、どっさりと、30枚ほどでしょうか、見せて頂いた原画は、波山、梅樹の陶器やモザイク作品の上に成立していた図案が帯にふさわしい姿へと移しかえられていて、何とも胸のときめくものでした。
一枚一枚、どの原画も素敵なのですが、私が選んだのは、上の写真の、すっと横に渡る唐草の図案。波山の香炉から取ったという原画です。
今回の誂えの主旨として、手持ちの中ではどうも合う帯がない縦縞のきものがあり、そのきものに添う帯として作りたい旨をお話ししながら原画を見ていました。その中で、きものが縦縞なのだから、横に渡る柄がいい、と、あき子さんと意見が一致したのが嬉しくて。
そしてその縞の着物がブルー系のため、原画の花の色は赤ですが、あき子さんが新しい配色を見立ててくださることになりました。
ああ、嬉しい。あき子さんに見立てて頂く、ということが私の夢だったから。
*
そんな中、この日は私にくっついて遊びに来ただけ、のはずの珠子も、気がつけば一緒に誂えていて。いや、そうなるのでは?という気もしていたのですけれどね。
彼女が選んだのは、こちらの、私が楽し過ぎて大口を開けて笑っている写真の手前に映っている笹の葉の図案です。とてもかっこいい帯になりそう。やはり波山の図案で、こちらも出来上がりが楽しみです。
これらの帯は、むら田の盟友である京都「三風魯」の職人さんが、「すくい織」という技法で一本一本手仕事で織り上げます。出来上がりは秋の初め頃になるでしょうか。ゆっくりと待つのも楽しいものです。
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この日の私のきものは、父の知人の方から頂いた、紺地に白の小花模様の単衣。コロナ2年目に頂いて、やっと今年、着ることが出来ました。頂いて、たとうを開いた瞬間から大好きだった一枚。以前、ブログでご紹介したので覚えていて頂いている方もいらっしゃるかもしれません。
帯は、鷺草を描いた絽の染め帯。こちらはきもの仲間のお姉さま圭子さんから、以前、激安で譲って頂いた一本。まだ少し季節が早いのですが、実は、今年の夏、私はきものを着ることが難しい事情があり(その理由はまた別の日のブログにて)、いかにも夏らしい模様を締めてみたかったのです。まだ夏も始まっていないのに、これにて夏の模様の着納めとは悲しい限りですが、それでも、一度でも着られて満足。帯締めは道明の練色の冠組です。
人生山あり谷あり。この夏は少しばかり厳しい夏となりそうなのですが、帯の出来上がりを支えに過ごしていきたいと思います。